現物給付
健康保険では、保険が適用されない保険外の療養を受けると、保険が適用される療養にかかる費用も含めて、医療費の全額が自己負担となります。
ただし、医療技術の進歩や患者のニーズの多様化に対応するために、保険適用外の療養を受ける場合でも、一定の条件を満たした「評価療養」と「選定療養」については保険との併用が認められ、保険のワクを超える部分についての差額は自己負担しますが、保険が適用される療養にかかる費用は保険診療に準じた保険給付が行われます。
この保険が行われる部分は、一般の保険診療に準じて3割を自己負担して、残額は「保険外併用療養費」として健康保険で負担します。
平成28年4月より、困難な病気と闘う患者からの申出を起点とする、最先端の医療技術などを迅速に受けられる仕組みとして、患者申出療養制度が創設されました。申出が認められた場合、場合によっては身近な医療機関等でも、先進医療と同様に保険との併用で療養が受けられるようになります。
※被扶養者の保険外併用療養費にかかる給付は、家族療養費としてその費用が支給されます。
※保険のワク内の自己負担分については、高額療養費の対象となります。
※入院時の食費(65歳以上75歳未満の高齢者が療養病床に入院した場合は食費・居住費)については別途負担があります。
評価療養と選定療養
保険適用外の療養のうち、評価療養は医学的な価値が定まっていない新しい治療法や新薬など、将来的に保険導入をするか評価される療養のことです。選定療養は特別な療養環境など患者が自ら希望して選ぶ療養で、保険導入を前提としない療養のことです。
- 厚生労働大臣の定める評価療養および選定療養
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<評価療養>
- 先進医療(高度医療を含む)
- 医薬品の治験にかかる診療
- 医療機器の治験にかかる診療
- 薬価基準収載前の承認医薬品の投与
- 保険適用前の承認医療機器の使用
- 薬価基準に収載されている医薬品の適応外使用
- 保険適用されている医療機器の適応外使用
<選定療養>
- 特別の療養環境の提供(差額ベッドへの入院)
- 予約診療
- 時間外の診療
- 前歯部の材料差額
- 金属床総義歯
- 200床以上の病院の未紹介患者の初診
- 200床以上の病院の再診
- 特定機能病院・500床以上の地域医療支援病院の未紹介患者の初診
- 特定機能病院・500床以上の地域医療支援病院の再診
- 制限回数を超える医療行為
- 180日を超える入院
- 小児う蝕の治療終了後の継続管理
- 先進医療
- 保険適用外の先進的な医療技術でも、一定の条件を満たせば「先進医療」として保険との併用が認められています。具体的には、医療技術ごとに設定された施設基準に該当する保険医療機関が届け出をすることにより実施できます。
また、未承認の薬や医療機器を使用する先進的な医療技術についても、一定の条件の下に「高度医療」と認められる場合は、「先進医療」の一類型として保険との併用が認められています。この場合、実施できる医療機関は大学病院などの特定機能病院または同等の体制の病院に限られています。
- 患者申出療養
- 先進医療の実施医療機関が身近にない場合や、受けたい医療技術や医薬品等が先進医療として認められていない場合などでも、患者が国に申出をし、「患者申出療養」として認められた場合には、保険と併用して療養を受けることができます。申出には臨床研究中核病院で作成する書類が必要です。国は、安全性・有効性等を審査確認したうえで、新規の技術等については申出から6週間で審査結果を臨床研究中核病院を通じて患者へ通知します。患者申出療養として前例のある技術等を身近な医療機関で受けたい場合については、臨床研究中核病院へ申出をし、2週間で審査結果を臨床研究中核病院より患者へ通知します。
- 入院の室料
- 入院の室料も保険の適用範囲内ですが、個室などふつうの病室より条件のよい病室に入ると、その差額を負担しなければなりません。差額ベッドといわれていますが、正式には特別療養環境室といいます。なお、差額を支払うのは患者本人が特別療養環境室を希望したときに限られます。
条件のよい病室とは、いろいろ考えられますが、差額を求められるのは、個室または2人部屋だけでなく、3人部屋や4人部屋でも、次のような条件を満たした場合です。- 1病室の病床数が4床以下
- 病室の面積が1人当たり6.4平方メートル以上
- 病床ごとにプライバシーの確保をはかるための設備を備えていること
- 患者個人用の収納設備や、机、イス、照明の設置などです。
大部屋をベニヤ板で間仕切りをして個室部屋としたり、また新築だから、日当たりがよいからといった理由も認められません。
- 歯の治療
- 歯の治療は通常すべて保険で受けることができますが、金属床による総義歯などを希望するときは、保険で認められていない材料を使っても保険との差額を負担すればよい場合があります。